子育てしやすい街づくりを目指して。 ~院長みずから患者さんと繋がり地域密着を実現~【オンライン診療システム×小児科】

かねここどもクリニック
金子 淳 院長

新型コロナウイルス感染症への対策としてオンライン診療が規制緩和され、着実に普及してきました。しかし、どのような患者さんに案内すればよいのか、どのように始めればよいのか悩む先生方も多く、実際に医療機関の中で運用を整備するには依然として高いハードルがあります。
そんな中、500名程の患者さんにオンライン診療を実施し、広く価値を届けているかねここどもクリニックの金子淳先生をご紹介します。
愛知県北名古屋市で「この街を少しでも子育てしやすい街にしたい」と仰る先生に、オンライン診療の取り組みについてお話を伺いました。

ー小児科でオンライン診療(遠隔 診療)を導入したきっかけについて教えてください。

当院で導入していた電子カルテの中に「YaDoc」が搭載されていたので、機能としてオンライン診療が実施できることは知っていました。

正直いうと、インターネット回線を介して患者さんを診ることに抵抗がありました。患者さんを「さわって、耳で聴いて・・・」が診療の基本であるのに、「画面を通じてできるのか?」という疑問があったからです。私自身ITが得意なほうではありませんし、これだけ活用できるようになるとは正直想像ができませんでした。笑

ただ、いつかは取り組まないといけないと考えていましたので、オンライン診療ではなく「オンラインよろず相談」として、相談窓口を設ける事から始めました。年末年始や大型連休に予約制で対応して、現在も継続して行っています。オンラインよろず相談は現在、多い時は1日に6人程度実施することもあります。

本格的にオンライン診療に取り組むきっかけになったのは、やはりコロナウイルスの流行です。実際、コロナウイルスの感染が怖いという理由で、診察予約がキャンセルとなったこともありました。そこで、お子さんたちや親御さんの不安を少しでも解消しようと、本格的にオンライン診療を導入することを決めました。当時は早急に導入したかったので、電子カルテにYaDocが入っていることを思い出し、すぐに使い方を教えていただきました。

ー今、どのようにオンライン診療(遠隔 診療)を活用されているか教えてください。

対面診察の翌日の病状や調子を診たい場合、状態により来院ではなく「明日はオンラインで診ましょうか?」と私から提案することがあります。
オンライン診療を取り入れる以前は、親御さんの仕事の都合で来院ができず、フォローしたくてもできないことがありました。また調子が悪い状態で来院することがお子さんやご家族の負担になる場合もあります。この点オンライン診療であれば、来院する手間がなく短時間で診療が可能ですので、忙しい親御さんでも気軽に診療に参加いただくことができます。

患者さん自らご予約いただく場合は、保湿剤や喘息予防薬の定期処方、予防接種後の接種部分の腫れや発熱時の相談、体調が悪い場合症状や市販薬内服の相談、転倒転落後の対応など様々な疾患に対応しています。現在は多い時には1日10人以上のお子さんの診療をオンラインで行っています。
小さいお子さんの場合、お母さんも毎日不安の中お世話をしており、ちょっとしたことでも不安を抱えています。そんな時に正しい情報と適切な相談窓口があればとても安心していただけると思います。

また、現在はオンライン診療も初診から行うことが可能ですので、初めて当院に受診される場合でもYaDoc上で保険証や乳児医療証を確認し診療しています。

診療時間内・診療時間外に多くのオンライン予約枠を設けているので、緊急的な対応を必要とする場合も、オンラインで対応ができることが多くあります。そのため、お電話での緊急の問い合わせは減りました。
オンラインという手段があれば感染対策にもなりますし、対面診察で丁寧に診察し、オンラインでしっかりとフォローして経過が追える事は、とても意義のあることだと思います。
医師としても適切な判断・治療ができているかの確認もできますし、治療の経過から学びにもなり、自身の診断や処方に責任をもって臨めることの大切さを、オンラインを始めたことによって改めて感じます。

ー運用に際して、患者さんへの案内や予約管理など工夫されている点はありますか?

オンライン診療は私が中心となって行っています。対面診療の中で1時間に2人程度のオンラインの診療枠を私自身で設定をします。予約が入ると、受付さんにお伝えして、予約時間にカルテを用意していただきます。その後予約時間となったら電子カルテからYaDocを立ち上げ、通話を開始します。よろず相談も同様に、診察時間外に私が相談可能な時間を設定しています。
患者さんへの案内は診察時以外にも、ホームページやSNS、院内の掲示を使って実施しています。

また、工夫としては、事前の確認を重要視しています。患者さんのご自宅のインターネットの環境が影響することも多いので、事前の確認がとても大切ですね。部屋の明るさや、カメラワーク、スマホの音声をスピーカーにしてもらうなど、あらかじめお伝えしておかないと当日スムーズにいかないこともあり、案内時に準備することがとても大切です。

ー実際に小児科でオンライン診療(遠隔 診療)を導入してみての感想をお聞かせください。

診察室では見ることのできない、お子さんの生活環境も含めた情報を得られるのはとても良いと感じています。
アレルギー疾患をお持ちのお子さんの場合などは、ご自宅の様子をみて療養環境についてもアドバイスができたこともあります。診察室だから診ることができることやオンライン診療ではできないことはもちろんありますが、オンライン診療で得られる情報は、有益なものが多く存在すると感じています。

ーオンライン診療(遠隔 診療)に関して、今後の展望をお聞かせください。

当院に受診したことのあるこどもたちだけでなく、地域ぐるみでフォローできるようなことができたらと思います。保育園や施設にいるこどもたちが少しでも健康で笑顔になれるような取り組みがしたいですね。

患者さんからの発信や要望を待つだけでなく、医師が主体的に新しい取り組みや情報を発信し、すこしでも患者さんと医師がつながって地域に密着していきたい。「先生」というより、近所の少し医療に詳しい「おじさん?」(笑)というコンセプトでいきたい。少しでも子育てしやすい街にしていきたいですね。

オンライン診療を活用し、地域に密着した取り組みをされている金子先生にお話を伺いました。
かかりつけ医として対面診療の補完でオンライン診療を活用されている取り組みを引き続き発信いたします。

※YaDocの導入、および臨床における利用は、各医療機関の医師の判断によるものです。